2 ビネガーシンドロームの発症と経過
フィルム自身が加水分解をはじめて、ネガフォルダーの中で酢酸ガスの濃度が上昇
(1) フィルムの加水分解作用で自分自身が酢酸ガス等を発生
(2) ネガフォルダーが化学樹脂製で、通気性がほとんど無い場合
自己分解→酢酸ガス発生速度が加速、酢酸ガス濃度上昇の悪循環
(3)短期間(年単位)のうちに加速度的にフィルムは破壊されてます。
(4)発生場所は様々で局所のみ悪化している例もあり
(5)化学樹脂ケースではフィルムと溶着する状況も発生
(6)丸まって広がらなくなり、無理に広げると損傷するようになって、フィルムの使命終了 |
3 発症原因
フィルムの基盤材トリアセテート(TAC)が加水分解しやすい性質があり、これに以下の条件が加わると発症します。
メーカーを問わず発症しますので、フィルムの構成材質と現像処理と保存方法の3要素が絡みます。
これらはメーカーも断定が困難なうえ、具体的な発表がなされていません。
店主としては以下の推測を行っています。
(1) 現像、定着工程
処理時の薬剤構成や処理液の疲労や濃度、水洗等。
(2) 保存方法
温度、湿度、保管容器、容器やフィルムケースの通気性
(1)、(2)やその他の状況が絡まって発症。 |
4 発症の具体例-1(ビネガーシンドローム)
店主のチョイスですので、他に事例発表は多数あります。この囲みの中は全て外部リンクです。
レイルマガジン名取編集局長のブログ
(1)編集長敬白 ”ビネガーシンドローム警報”発令中(2008.05.31付)
http://rail.hobidas.com/blog/natori09/archives/2008/05/post-786.htm
(2)編集長敬白 ”ビネガーシンドローム”感染拡大中(2010.01.16付)>
http://rail.hobidas.com/blog/natori/archives/2010/01/post_1190.html
(3)編集長敬白 ”『わが国鉄時代』vol.7は緊急特集「あなたの『国鉄時代』を護る」。(2011.11.22付)
http://rail.hobidas.com/blog/natori/archives/2011/11/post_228.html
湯口徹さん
湯口徹さん著の「黒潮と小さな汽車の通り道」(上巻)の「はじめに」で、中段から「ネオパンSSのヴィネガーシンドロームで
120本のネガがやられて・・・。」下巻ではエピローグで「フジフィルムのヴィネガー・シンドローム」と題してその状況を詳説
されておられます。
国会図書館の資料リンクはこの下方ですが→こちらからも |
5 発症の具体例-2(店主の扱ったフィルム)
発症例はフジ、サクラ、コダックの全メーカーで確認しております。
お客様や店主自身のネガ等で様々な状態を確認しましたが、共通するのは、酢酸臭です。
・主な症状
フィルム送り穴のシワ、全体の縮み、曲り、丸まり、乳剤剥がれへと進行します。
・化学樹脂のネガケース
フィルムと溶着の危険を抱えます。
ビネガーシンドロームが進行すると、特定の化学樹脂製のケースと化学反応を起こして液状化するため、
樹脂製のネガ袋にベタ付き始めます。
このネガ濡れているのかな?という感じです。双方完全に固着してはがれないフィルムもありました。
※全ての樹脂と反応するのではありませんが、材質の判断が困難です。
※フィルムベースの丸まる性質上、表面側が多い。
店主の発症例や挑戦・・・失敗等の4ページは→こちら |
6 発症の具体例-3(マイクロスコピックブレミッシュ等)
カラーフィルム変褪色と粒子溶連、ベース黄変や白黒フィルムの粒子の溶連
「銀」が関係する色粒子酸化破壊され、カビ模様のように融合します。
色素材の変色、褪色
カラーフィルムの発症で一番多いのは「ベース黄変褪色」です。
画像から1980年代と思われるフィルムも発症しておりました。→化学樹脂のフィルムスリーブ入
白黒フィルム
本来は綺麗に並ぶ粒子が「溶連」するため、グラデーションが荒くなり、高感度フィルムのような状況になります。
お客様や店主の発症例は→こちら |
発症後の諸処
・進行を止める手立てはありません。
進行を加速させるのが自己発生する「酢酸ガス」なので、通気を良くして「濃度」を下げる方策が有効です。
御客様の白黒フィルム百本超が40年前後経過していて、ビネガーシンドローム症状と酢酸臭がありましたが、
ネガフォルダーは全て紙製で通気が良かったのでしょう。フィルムベースの状態はかなり良でした。
・健全なフィルムの隔離
酢酸ガスの影響でフィルムベースが刺激されるので、発症しているフィルムから
健全なフィルムをいち早く、隔離して保管場所を別にするという手立てが「症状進行遅延対策」として有効です。
同時にカビ対策として湿度管理も重要です。
・とにかく高品位なデジタル化を行う
一度だけで済むように高解像度、高品位な画質でフィルムのデジタル化を行い、現在の状況で画像をデジタル保存します。、
デジタルデータは破損しなければ変化無く、そしてパソコンで様々に活用出来るファイルとなります。
・自己発生する酢酸ガス
通常の生活空間において酢酸ガスを気にされる必要はありません。
ネガケースの中の、ミリ単位〜ミクロンの空間で発生している酢酸ガスのお話です。
こだわったとしてもネガフォルダーが収容されている箱の中の話です。
・症状進行の遅延策
ビネガーシンドローム対策はネガフォルダー自体を通気性のあるものに変更し、通気や湿気に気配りして
進行の遅延対策とする。という簡単な話です。
・遅延せずに進行
「マイクロスコピックブレミッシュ現象等」です。
空気と触れ合う酸化ですから、これは通常、対策が困難です。
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なぜ広報周知されないのか
30~100年経過したことにフィルムメーカは補償の限りでは無いと、一般向けにダンマリ作戦?です。
※発症には、製造、現像処理、保存環境等多岐にわたる諸処の環境要因の事実はありますが・・・。
このダンマリ姿勢は
広告(収入)などでお付合いのあるマスコミ・出版界が警告記事を書かない原因?
となっているのではないかと推測されます。
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関連の各ページへ 2020.07現在 |
■ビネガー復原アイロンキット本体の紹介→こちら
■ビネガー復原アイロンキットの効能概要
(1) 円弧状からエンピツ状まで、弾力の残ったフィルムの平面化
鉛筆的に丸まったフィルムを救出→鉛筆状に丸まったフィルム
(2) フィルム内で活性化している酢酸の活性度を極限まで低下させ延命
※店主のビネガーフィルムは約10年前の処理開始以来、全て変化無く延命中
▲パリパリ系のフィルムSCAN??
フィルムのビネガー最終形の寸前→ラストチャンスに賭ける
ビネガー最終形の固化フィルム →最強・最極悪のフィルム
(3) 一気にビネガーフィルムを処理
ガラス挟みスキャンにお勧め
大判ビネガー復原アイロンキットで、一旦加熱、酢酸を蒸散?活性度を極低下させる。
長期間保存※後に再度、ビネガー復原アイロンキットで再加熱してSCANすればOK!
※湿度管理と定期換気が条件 |
■ビネガーアイロン・SCAN時の必要品
(1) 保存用の収納スリーブ
グラシン紙スリーブしか無いと考えています→グラシンスリーブ
(2) ベンジン
衣類しみ抜き用等、薬局で購入可能
(3) クリーニングペーパー
ベンジンを含ませて、清拭時に糸屑の出ない極細化学繊維のペーパー
が最適です。
※HCLデジタルクリーニングペーパーは製造元の三菱製紙が生産終了
代替品として2品見つけました。他にもいろいろ製品があるようです
■ レンズクリーニングペーパーNikonシルボン紙セット
レンズクリーニング液やアルコール系。ベンジン??(店主未使用)
■ クラフレックス ハイエックス
印刷輪転機等清拭用 (HE-503M)購入ロットが大きいです(店主使用済)
(4) エアコンプレッサー
スキャン時のゴミ飛ばしに模型用の小型コンプレッサーをお勧めします。
コンプレッサーの例:エアテックス AIRTEX APC-001R2等の低騒音型
模型用?と本職用?は口径が違い、互換用の接続器具に合ったものをお探しください。
購入時に口径と接続部分は充分に御注意下さい。
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■スキャン方法
(1) エプソン GT-X980/970 →概略的に →実践的に →設定方法のキモ
(2) アイロン後に湾曲残るフィルムはガラス挟みスキャンで→ガラス挟みSCAN
(3) 高画素のデジタルカメラでSCAN →NikonES-2
(4) RAWのネガ反転ソフト→RAW反転ソフト
■データ保存は→こちら
■SCANデーターの命名規則等→こちら
■USB接続機器の取り外し方→こちら
■ハードディスクの収納装置→こちら
■パソコンを自作する→こちら |
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