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ビネガーシンドロームQ&A 2022.02.07補訂
何故35mmフィルムに多発するのか
店主が扱ったフィルムから推察するに「パーフォレーション(送り穴)」
の断面が空気に触れる面積として大きく、そこから「やられていく」
状況が見られます。穴の無いブローニフィルムにビネガーが酷い話を
ほぼ聞いておりません←アンテナが狭いから??という考察次第です。 |
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<2015.07.25>最近、感光材の色ヌケが酷くなってきたと感じています。保存年はどんどん経過しています。
白黒、ポジ、カラーネガなど全てメリハリが薄れてしまうフィルム多数。写真関係者も頭を抱える大事態・・・。
正直、悩むよりさっさと決断(投資)、適正な機器、【後悔しない解像度】でスキャンされた方が良いと思います。
→御自分でやってみよう |
TACベースフィルムのビネガーシンドロームいやぁ、お酢臭い!!
フジネオパンに代表されるビネガーシンドローム↓↓それだけ利用者が多かった! |
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発症後の画像はこちら |
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1 フィルム劣化の3大症状とは
フィルムベースと感光材料それぞれが経年劣化するもので、
フィルム特性、現像処理、保存状態が複雑に絡んで原因の特定はほぼ困難です。
発症したら進行は一般には止められません。
◆ビネガーシンドローム
・フィルムのベースが徐々に自己溶解、変形します。
フィルムから強いお酢(酢酸)の臭いがすることが特徴→名称由来
◆PETベースフィルムの劣化
樹脂ケースに溶着、あるいはガス濃度の変化によると思われる変退色多数発見中です。
本ページに掲載。直ぐ見たい方へ 画像は→こちら 劣化の認識発表は→こちら
◆マイクロスコピックブレミッシュ
感光剤が経年劣化(酸化)して粒子同士が結合、変色したり剥離します。
◆対策
・デジタル化>・・・劣化進行で1度しかスキャン出来ないつもりで選別せずのすべてのネガをSCANしましょう
高品位な画質でスキャンを行い、現時点の色調保存
・保存方法の改善>→通気や調湿等の確保→保存環境の自己管理 |
2 ビネガーシンドロームの発症と経過
超くどいですがビネガー復原アイロンで酢酸をできる限り除去し、グラシンペーパーにて湿度管理の上、延命することをお勧めします |
フィルム自身が加水分解をはじめて、ネガフォルダーの中で酢酸ガスの濃度が上昇
(1) フィルムの加水分解作用で自分自身が酢酸ガス等を発生
(2) ネガフォルダーが化学樹脂製で、通気性がほとんど無い場合
自己分解→酢酸ガス発生速度が加速、酢酸ガス濃度上昇の悪循環
(3)短期間(年単位)のうちに加速度的にフィルム素材と粒子は破壊されてます。
(4)発生場所は様々で局所のみ悪化している例もあり
(5)化学樹脂ケースではフィルムと溶着する状況も発生
(6)丸まって広がらなくなり、無理に広げると損傷するようになって、フィルムの使命終了 |
2-1発症後の画像(店主の扱ったフィルム)
発症例はフジ、サクラ、コダックの全メーカーの「トリアセテートベースフィルム(TAC)」で確認しております。
お客様や店主自身のネガ等で様々な状態を確認しましたが、共通するのは、強烈な酢酸臭です。
・主な症状
フィルム送り穴のシワ、全体の縮み、曲り、丸まり、乳剤剥がれへと進行します。
・化学樹脂のネガケース
フィルムとケース溶着の危険を抱えます。
ビネガーシンドロームが進行すると、特定の化学樹脂製のケースと化学反応を起こして液状化するため、
樹脂製のネガ袋にベタ付き始めます。
このネガ濡れているのかな?という感じです。双方完全に固着してはがれないフィルムもありました。
※全ての樹脂と反応するのではありませんが、材質の判断が困難です。
※フィルムベースの丸まる性質上、表面側が多い。
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↑↓この状態は意外とビネガーフィルム復原アイロン(組み立てキット)で修復が可能な場合もアリ。
但し、パリパリ折れる、ネトネト状態のフィルムはは禁忌 |
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ビネガー復原アイロンキットによる平面化&フィルム内の酢酸を極低活性化 |
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【ご注意】全てのフィルムの平滑化の保証はしません。千差万別、自己責任にてお願いいたします。
ビネガーアイロンキットの詳細 だだし、
表面がネトネト、ヌルヌル状態のてかりのあるフィルムで
店主がアイロン成功した例は皆無です。水洗厳禁その場でオシャカ!
パリパリのフィルムにも使用御法度です。 |
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主原因はフィルムケースに難がありました。 |
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↓ カラーネガもこのように発症します。 |
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<注意喚起:PETベースのフィルム>←これは匂いません
2000年以降に現像したPETベースのフィルムが化学樹脂ケースと感光剤が溶着する
事例をかなり確認しつつあります。→画像事例(本ページ下部) 研究発表は下記リンク9から
因果関係は密封に近い状況での「発生ガス」なのか、「悪化しているフィルム」をかなり確認しました。
化学樹脂ケースに保存されている方は、大丈夫と思わずに、ネガケースの表裏を確認して見てください。
通気性がほぼ無い化学樹脂ケースで長期保存は「最悪」。>「通気性」を確保が最優先です。
>※ただし湿度と温度の管理を怠るとカビの発生やさらなる悪化>に繋がるので注意してください。
2-3 PETベースのフィルムでも通気性無しが原因?の溶着変退色
2000年以降のフィルムで発症事例をかなり確認中です。
店主が化学樹脂スリーブで保存していたスリーブ状態の「ポジ」が密着し、汗かいて変色していました。
PETベースのフィルムなので「ビネガーシンドローム」ではありませんが、感光材料層が反応して、
変退色していました。原因は現像処理過程なのか、保存過程で自然発生なのか??
通気性がある程度あれば防げた事例です。
さらにお客様のフィルムで完全にケースと溶着した画像をご覧ください。非常に危険です。 |
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↑黄線の中の樹脂ケースがフィルムの感光材料と反応してたわんでいます。 |
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↑フィルム本体の感光材料層は「つや消し」のような痕跡が残っています。このまま放置していたらどうなるのでしょうか。 |
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↑お客様のコダック公式樹脂ケースに入って部分溶着中のT-400フィルム
※ケースを引き裂いて、はがさないと取り出せない状況になっていました。 |
当たり前ですがマウントしたポジに溶着の発生はありません。
マウント同士が密着しても、ネガとの隙間が確保され、画像と化学樹脂ケースとの密着が無いため、空気と反応する退色や マイクロスコピッシュブレミッシュ等のみと思われます。
ただし、樹脂箱が多いのでガス濃度は上昇します。通気性のある箱に保管替えを。 |
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3 ビネガーシンドローム発症原因
何故35mmフィルムに多発するのか
店主が扱ったフィルムから推察するに「パーフォレーション(送り穴)」の断面が空気に触れる面積として
大きく、そこから「やられていく」状況が見られます。
穴の無いブローニフィルムにビネガーが酷い話をほぼ聞いておりません
※店主のアンテナが狭いから??という考察次第です。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
フィルムの基盤材トリアセテート(TAC)が加水分解しやすい性質があり、これに以下の条件が加わると発症します。
メーカーを問わず発症しますので、フィルムの構成材質と現像処理と保存方法の3要素が絡みます。
これらはメーカーも断定が困難なうえ、具体的な発表がなされていません。
店主としては以下の推測を行っています。
(1) 現像、定着工程
処理時の薬剤構成や処理液の疲労や濃度、水洗等。
(2) 保存方法
温度、湿度、保管容器、容器やフィルムケースの通気性
(1)、(2)やその他の状況が絡まって発症。 |
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4 発症の具体例-2(マイクロスコピックブレミッシュ等)
カラーフィルム変褪色と粒子溶連、ベース黄変や白黒フィルムの粒子の溶連
「銀」が関係する色粒子酸化破壊され、カビ模様のように融合します。
色素材の変色、褪色
カラーフィルムの発症で一番多いのは「ベース黄変褪色」です。
画像から1980年代と思われるフィルムも発症しておりました。→化学樹脂のフィルムスリーブ入
白黒フィルム
本来は綺麗に並ぶ粒子が「溶連」するため、グラデーションが荒くなり、高感度フィルムのような状況になります。
お客様や店主の発症例は→こちら※大画像のため表示されるまで時間がかかります。少々お待ちください |
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5 発症後の諸処
の項目は2018.08ビネガーフィルム復原アイロン(組み立てキット)を発売しましたので改善に御利用ください
・進行を止める手立てはありません。
進行を加速させるのが自己発生する「酢酸ガス」なので、通気を良くして「濃度」を下げる方策が有効です。
御客様の白黒フィルム百本超が40年前後経過していて、ビネガーシンドローム症状と酢酸臭がありましたが、
ネガフォルダーは全て紙製で通気が良かったのでしょう。フィルムベースの状態はかなり良でした。
・ある程度平面性が残っている場合は、加熱前に迷わずスキャンしましょう。
その後、ビネガー復原アイロンで酢酸を抜き、グラシンペーパースリーブに湿度注意で保管して頂くのがベストと
思います。
かなり丸まった場合はビネガー復原アイロンで平面性を確保してEPSONGT-X980でスキャンして下さい。
・その際は高品位なデジタル化を行う
一度だけで済むように高解像度、高品位な画質でフィルムのデジタル化を行い、現在の状況で画像をデジタル保存します
デジタルデータは記憶媒体が破損しなければ変化無く、そしてパソコンで様々に活用出来るファイルとなります。
・筒状に丸まって乾燥したフイルムの中には平面展開ができても、フィルム基盤と感光材料層が分離する最終形態のものも
あります。自己責任復元不可
・表面がネトネト、ヌルヌル状態のてかりのある進行フィルムで店主が成功した例は皆無です。
以下のようにオシャカになります。
(1) アイロン後、直ったようだが、スキャンすると感光材が光干渉のようにシマシマうねりになる。
(2) フィルムが波を打ってしまう→縮みの一種だが本稿では別種として扱い。
(3) フィルムが縮んで湾曲してしまう。
・健全なフィルムの隔離
酢酸ガスの影響でフィルムベースが刺激されるので、発症しているフィルムから
健全なフィルムをいち早く、隔離して保管場所を別にするという手立てが「症状進行遅延対策」として有効です。
同時にカビ対策として湿度管理も重要です。
・症状進行の遅延策
ビネガーシンドローム対策はネガフォルダー自体を通気性のあるものに変更し、通気や湿気に気配りして
進行の遅延対策とする。という簡単な話です。→グラシンペーパースリーブ→こちら
当店発売のビネガーフィルム復原アイロン(組み立てキット)で酢酸を減少させる手立てもあります(2018.06追記)
・自己発生する酢酸ガス
通常の生活空間において酢酸ガスを気にされる必要はありません。
ネガケースの中の、ミリ単位〜ミクロンの空間で発生している酢酸ガスのお話です。臭いは強弱あり。
ビネガー復原アイロンで酢酸をできる限り除去しましょう
下記にて乾燥法なとを記載
◆遅延せずに進行
「マイクロスコピックブレミッシュ現象・色抜け等」です。
空気と触れ合う酸化ですから、これは通常、対策が困難です |
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6 なぜ広報周知されないのか
フィルムメーカは日本ではほぼ1社のみ存続。関連業界は、一般向けにダンマリ作戦?です。
※当然のこととして製品保証期限なんて切れていますから・・・。
歴史を残したい方々の材料が・・・。ダメになってしまうなんて・・・。
※発症には、製造、【現像処理】、保存環境等多岐にわたる諸処の環境要因の事実が・・・。
訴訟社会に入った日本では、訴訟や損害賠償のリスクを避ける万全の周知方法が無いからだと思慮します。
さらにデジタル化で、メーカー自体も撤退、倒産、関連業界もほぼ手を引いているため、
何かしようにも現存の1社のみが標的にされ、受け皿すら構成できないのでは無いかとも思われます。
ましてや雨後の竹の子のようにあった白黒フィルムの現像店舗は壊滅状態で、疲れた現像液や停止、定着液が
原因かどうかも不明。
全部のTACフィルムがビネガーに罹患していない状況から因果関係の証明なんて費用対効果で誰がやれるのでしょう。 このため、広告(収入)などでお付合いのあるマスコミ・出版界は、当時から警告記事を書けなかった?と邪推します。 |
お持ちのフィルムの状況確認を!!
大丈夫と思ってしまっていたフィルムが実は危ない!ことも。
俺のは大丈夫!で「箱を開けたら」アリャリャ〜進行中の実例は良く聞く話になりました。
至急、フィルムの臭いを嗅いでください。お酢くさければアウトです。
カラーフィルムの黄変褪色はデジタル化やプリントしてみないと判りません。
大切な「人や家族」の思い出のあるフィルムはデジタル化または業者の写真プリント2L版等にしておくことをお勧め |
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7 ◆少しでも保存方法を改善(遅延)したい
気性のあるスリーブでフィルムが乾燥するに従って酢酸の加水分解は低下します。
ネトネトフィルムは乾燥させてビネガーフィルム復原アイロン(組み立てキット)でフィルムの平滑化、
酢酸をできる限り除去し、即座にSCANして電子化しましょう→下記のSCAN方法をご覧ください。
■フィルムが息をできるよう
フイルムスリーブ(ケース)を保管する箱に通気性を持たせる
■通気性のあるグラシンペーパースリーブに収納する。
(株)コスモスインターナショナル様に発売を頂いています。→こちら関連記事も記載しています。
(2)調湿する※グラシンペーパースリーブに入れてから
■密閉式の箱
グラシンスリーブを平面に置ける大きさの密封箱に吸湿剤をこまめ入れ替えて調湿、そのときに内部空気交換する。
毎月空気の入れ換えでガスを換気しないと悪化します。乾燥剤を入れすぎると、乾燥しすぎて「割れるフィルム」
になってしまいます。 |
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関連の各ページへ 2024.06補訂 |
■ビネガー復原アイロンキット本体の紹介→こちら
■ビネガー復原アイロンキットの効能概要
(1) 円弧状からエンピツ状まで、弾力の残ったフィルムの平面化
鉛筆的に丸まったフィルムを救出→鉛筆状に丸まったフィルム
(2) フィルム内で活性化している酢酸の活性度を極限まで低下させ延命
※店主のビネガーフィルムは約10年以上前の処理開始以来、全て変化無く延命中
▲パリパリ系のフィルムSCAN??
フィルムのビネガー最終形の寸前→ラストチャンスに賭ける
ビネガー最終形の固化フィルム →最強・最極悪のフィルム
(3) 一気にビネガーフィルムを処理
大判ビネガー復原アイロンキットで、一旦加熱、酢酸を蒸散?活性度を極低下させる。
長期間保存※後に再度、ビネガー復原アイロンキットで再加熱してSCANすればOK!
※湿度管理と定期換気が条件 |
■ビネガーアイロン・SCAN時の必要品
(1) 保存用の収納スリーブ
グラシン紙スリーブしか無いと考えています→グラシンスリーブ
(2) ベンジン
衣類しみ抜き用等、薬局で購入可能
(3) クリーニングペーパー
ベンジンを含ませて、清拭時に糸屑の出ない極細化学繊維のペーパー
が最適です。
(4) エアコンプレッサー
スキャン時のゴミ飛ばしに模型用の小型コンプレッサーをお勧めします。
コンプレッサーの例:エアテックス APC001R2(ヨドバシカメラにリンク) 等の低騒音型
模型用?と本職用?は口径が違い、互換用の接続器具に合ったものをお探しください。
購入時に口径と接続部分は充分に御注意下さい。
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■スキャン方法
SCAN解像度について→メーカー解説はその場限りの解像度
(1) エプソン GT-X980/970 →概略的に →実践的に →設定方法のキモ
(2) アイロン後に湾曲残るフィルムはガラス挟みスキャンで→ガラス挟みSCAN
(3) 高画素のデジタルカメラでSCAN →NikonES-2
(4) RAWのネガ反転ソフト→RAW反転ソフト
■データ保存は→こちら
■SCANデーターの命名規則等→こちら
■USB接続機器の取り外し方→こちら
■ハードディスクの収納装置→こちら
■パソコンを自作する→こちら |
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※店名略称:フィルムスキャンs、通称店名:鈴木写真変電所
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