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【京浜急行電鉄歴史】
東京市内線本来の申請は大正12年関東大震災の直後だった。さらに汐留線は??
2023.06.28 Ver1.02 |
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右→の運輸省内部文書にもあるように昭和22年に戦後の申請として扱われていた東京市内線。
しかし、使用されている地図が大正末期の地図だったり、メートル表記でなかったりと、店主は既に昭和22年以前に申請されたのでは?の疑いを持っていた。
出て来ました!申請の原本が。それは
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大正12年10月10日付けの文書番号「京亥土第184号」の「地方鉄道免許申請書」
東京市芝区高輪実案箕町より同市麹町区大手町に至る市内線を地方鉄道法により敷設・・・。
起業目論見書には
(1) 目的
地方鉄道法により電気鉄道を敷設し一般乗客を取り扱う
(2) 商号又は名称及び主たる事務所の設置地
名称 京浜電気鉄道株式会社
主たる事務所の設置地 神奈川県橘樹郡川崎町堀之内831番地
(3) 鉄道事業に要する資金の総額及び出資方法
資金の総額 金弐千万円 出資の方法 株式
(4) 線路の起終点及び経過すべき手なる市町村名
東京市芝区高輪南町27番地先を起点とし芝区西薹町2番地先にて東京市電気局電車線路を横断芝区赤羽町参番地先に至る此の間を地下せんとし2哩4鎖50節
前項終点付近にて東京市電気局電車線路及び古川を効果横断して麻布区飯倉町5丁目27番地先にて東京市電気局電車線路を高架横断芝区芝公園18号地先に至る此の間地上線29鎖50節
前項終点より麹町区大手町1番地先に至る地下線2哩15鎖にして
総延長4哩49鎖
(5) 軌間
4呎8吋半
(6) 動力
電力とし群馬電力(株)より供給を受けるものとす
という目論見書 |
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↑昭和22年の申請時の図面が入っていた封筒 |
↑京浜急行時代の申請の流れを部内解説用にまとめたメモ |
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↑↓この申請が出されたのは関東大震災から1ヶ月と10日が経過しようとした日。
まさに大慌てで作成されたモノだった。申請時点で路線図作成が間に合わなかったのか?
11月3日付で申請に必要な平面図を添付させるよう総務課から「線路図調整相成度」と記された文書が技術課宛に送付された。11月9日に別図の通り「東京近郊図に記入」として回答した。
多分、国土地理院の地図を使用した下記の平面図を京浜電鉄から徴して差し替えたと思われる |
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↑四に経過地が、五に軌間1435mmと記載されている
本線はまだ改軌していないのに・・・。浅草直通を狙ってか? |
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↑追申書 (京亥土197) |
現在、当社の起終点は横浜と東京の中心から外れているので、
大地震をで政府と民間が最善を尽くしているので、
この機会に両市の交通機能の増進して復興に役立ちたい
提出した線路の経過地については「お上」の言うとおりにするので
なにとぞお取りはからいくだされ・・・。と追申書を提出(店主の要約)
※震災復興に対しては「役所の復興計画を妨げない」ことが第一義で、会社からの「絶対」この地点を通過したい。は完全に無視される情勢。
京浜電鉄はほぼ同時期に横浜中心街に向けて路線延伸特許申請した書類にも同じように文言が並んでいるこちら
なお、当時の横浜(神奈川)より先は平屋の住宅地や海岸同然で、中心街は「伊勢佐木町、長者町周辺」だった。
繁華街に乗入れなければ乗客の獲得は困難で路面電車としての京浜電鉄は成り立たない
当時の周辺の状況は省横浜駅Ⅲに乗入れまで、鉄道省横浜駅移転3代の図をご覧ください |
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↓↓本来は大正12年10月10日付「京亥土第184号」の申請に使用されたはずの東京市内線の線路図
しかしこの図は昭和22年6月24日付(大)東急申請または京急、小田急、京王、東急の4社に分離した後の昭和23年8月31日付の再申請時に使われており、大正12年10月10日付の文書番号「京亥土第184号」に添付されていたのをむしり取られた(転用)状態だったことが判明した。
どうりで、この申請2本に平面図が無かった訳だ・・・・。
店主の疑いが明らかになった(今更・・・)
ここに掲載した地図は既にアップしている「東京市内線」同一のものです |
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↑↓高輪南町から地下で東進、赤羽橋手前で高架に |
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↑↓再び地下になって大手町に |
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↓↓ 昭和の再申請時には無かった縦断面図が添付されていました。 |
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↑僅かな区間の高架線が描かれています |
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驚きの汐留線の申請 |
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↑起業目論見書(差替分) |
↑右:京子土107号でT13.02.18京子33号の起業目論見書他差替願 |
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↑大正13年2月18日付け申請書(差替分 京子土33号の1) |
順に
・(大震災による)東京、横浜両市の復興気運に順応し両市間の交通機関の整備に役立ちたい
品川(八ツ山)から海路芝区月見町に出て同芝浦兆を過ぎ、同柴口1丁目汐留川岸付近に至る3哩50鎖を高架線路とする。既設本線と接して(※本線は改軌を行っていない)貨客の輸送営業を行いたい
・既に(大正12年10月10日付京亥土第184號)丸の内大手町に至る地下線の出願と重複するかの如きだが各々の路線は特種の使命があり、京浜二大都市を結ぶ本会社線の本分は両線相まって完璧になる。
・第1願(京亥土第184号)は市内の枢要な市街地を横断して帝都の再中心なる大手町に至る専ら繁劇なる交通路に便するを主眼とする
・第2願(大正13年2月18日付京子土第33號-1)一部は海面他埋め立て地を利用し目下殆ど無人の新境土を開拓せんとし、汐留、芝浦の地は海陸貨物の集散地なので貨物運輸に重きを置き、将来切実になる両都市間陸送貨物の輸送に新生命を開くものなり
・第1願は規定計画私営会社の認可線その他工事の難渋など幾多の難問題があって、省議(認可)の決定には時間が掛かることが予想される。
・第2願は第1願に比べて工事が簡単、簡便なので認可されれば速やかに、かつ容易に施設を実現し帝都の文化を促進すべき重大なる任務に貢献出来る
・(よって)第2願を至急調査、審議進められて、第1願に先んじて本願(第2願)を急速特許していただきたい。とある
この申請書は店主が見てきた限り、突っ込みどころが満載で大震災の後の混乱に乗じた素晴らしい??申請ではないかと思う
(1) 貨物営業
申請の1435mm軌間ではおそらく品川で1372mm軌間の本線に貨物積替になるが、そんなことはおくびにも触れず、仮に本気だったら既に工事が進められている「海岸電気軌道(T14.10.16営業開始)」で川崎・鶴見の工業地帯相互の貨物も大いにアテにしたろうし、さらにT14.7.7開業の国鉄川崎駅への貨物連絡線)もその構想にあったのだろうが、自社線内同士、国鉄や船便連絡で貨物積替必至で762mm軽便と1067mm国鉄の例を見ないまでも、何処まで貨物需要に自信があったのであろうか。
多分、貨物は第2願の特徴を出すための書類作成上フェイクであろう。
余談ではあるが、京浜電鉄はS13.07.04に貨物運輸を廃止した。
(2) 第2願を急速特許・・・
どう見ても、とにかく早急に都心乗り入れの権利を得たいだけの妄想申請
終点が現在の博品館付近であり、仮に当時の汐留(操車場)と連絡するのだったら、高架線かつ異軌間、連絡線を建設る場所もなさそうで、どう繋ぐのか・・・。
海上区間、全線高架と莫大な建設費がかかるこのような呆れた申請を受領する役所も役所だが、まぁ、むげに追い返す訳にもいかない。 |
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↑↓縦断面図 海上は鉄橋なのか?全線高架を築造する暴挙? |
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↓平面図ですが、品川Ⅰから新橋方向に並べました
見にくいと思う方は海上走る汐留線をご覧ください |
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↑人家が密集する宿場町でもあった品川徒歩新宿(かちしんじゅく)を起点
地図上「品川停車場」を新設している本線(在来の品川Ⅰ)は改称するつもりだったのか
線路の敷設場所もほぼ無く、貨物の積替所は何処に?? |
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↑埋めて地の端を拝借とばかりの線路敷設計画 |
全線高架線で、地上に降りるには勾配と距離の関係が出るが、申請書にある「汐留、芝浦の地は海陸貨物の集散地なので貨物運輸に重きを置き、将来切実になる両都市間陸送貨物の輸送に新生命を開く・・・」はどのようにして実現するのだろうか |
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↑新橋付近は広大な2カ所の「離宮」で、これ以上の人口増加は望めないのだが
汐留では高架線から平坦に降りて、貨物を積替するのか?取付勾配用地?
もう品川新駅で積み替え川崎連絡線(T14.07.17開業)まで持ってちゃえ!なのか? |
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↑調査したところ、隅田川河口改修事業に支障する他、既に交通機関がある本地区に新線を敷設する必要は無いので御詮議よろしく |
↑東京府知事:進達の関係で申請書類を送付しますが、当府の意見具申は内容を調査しているから処理を待ってください |
↑と、東京府は反対の意見具申を行って潰しにかかる。
隅田川河口改修事業含む歴史など→(東京都隅田川流域河川整備計画令和4年)
隅田川はお台場のあたりまで関わっている・・・。 |
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↑京亥土184、京子土33-1,(京子土107:差替依頼)の申請をまとめて却下する決裁(案) |
2つの申請が国にとって「実現困難かつ無用」なものと見なされて「聴き届難し」になるのだが
この平面図を引っ剥がして転用してゾンビのように、昭和22年に第2願を先行再申請、後に第1願を路線変更として2番目に変更申請に使用されて結果、都営線の乗り入れを果たすのだから当時の申請が現在の京急発展に役だった・・・。 |
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※店名略称:フィルムスキャンs、通称店名:鈴木写真変電所
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